なんという麺料理だろう。
ごらんの通り、見た目はさりげない。
しかし一度歯を入れれば、魅力の底へ引き込まれていく。
パリッ。
香ばしく焼けた麺から痛快な音が立つ。
中から柔らかな麺が現れて、歯が包まれる。
その途端、麺から優しい鳥の滋味が染みい出て、舌に広がっていくではないか。
汁気はない。
汁気はないのに、上等な鳥のスープを、飲んだような気になるではないか。
「干焼伊麺」と、料理名も素っ気ない。
麺を軽く茹でて、麺が持つ余分な香りを取ってから、鳥のスープで煮る。
その後乾かし、両面を焼いていく。
それなのに麺がのびていない。焼いた麺が均一に色がつき、かつ均一の厚さなのである。
下には炒めた黄ニラがあるが、極々軽く炒めて、麺の温度でほどよくなるようにしてある。
さらにこの麺に、白砂糖と黒酢をかけるのである。
するとどうだろう。
甘みと酸味に酢のコクが加わって、脳天を揺らす。
台北『ワールドトレドセンター』レストランでの〆である。。
あまりにも見た目がさりげないので、ありがたさがなく、お金がとれないのだが、高等な技がいる麺料理だという。
それは、高級とはなにかを教えてくれるのであった。