そのレストランは台北を見下ろすビルの最上階にあった。

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そのレストランは、台北を見下ろす高層ビルの最上階にあった。
結婚式もされていたから、恐らく百名は入れる大きさなのだが、会員制なのだ。という。
次々と出された前菜の、滷水煮を一口食べて唸った。
今まで数多くの滷水を食べてきた。しかしここの味わいには、品格がある。
しっかりと濃いのだが丸く穏やかで、一瞬にして舌と同化しようとする味わいがある。
だから鳥手羽も厚揚げも、ガチョウの血豆腐も豚の大腸も、懐かしいような暖かみを残しながら、するんと口の中から消えていく。
それだけではない。
どうやって丸くまとめたのか想像もできないほうれん草の胡麻ソース和え。
薄い皮が香ばしく、パリンと弾ける、仔豚の焼味。
大根の甘い香りを立てながら、従来のねっちりとは違って、ふんわりとムースのように溶けてしまう、揚げ大根餅XO醤かけ。
精妙に飾り切りされたマッシュルームの、青唐辛子の泡辣醤かけ。
四川名物料理の一つ、揚げインゲンのひき肉あえ。
蓮根とあわせた、香りが幾重にも立ち上げる、よだれ鶏。
前菜おどりていると、先にFBに上げた浮き袋のスープが出されて昇天するや、追い討ちをかけるように、ナマコと鮑である。
ナマコは高価な小さくトゲがたったもので、鮑は干したものではなく生を干鮑のように炊いた料理である。
鴨血豆腐の火鍋仕立てを挟んで、北京ダック。潮州料理が得意な店だが、オーナーが好物故に昔からやっているという。
見事な艶で輝く北京ダックを焼き師がはぎ取ると、さらに脂を少し削ぎ取ってから餅で挟む。
そのため脂っぽくなく皮の香ばしさと皮下の繊細な甘みが味わえる。
また餅も紙のように薄く軽く、見事である。
先日四川に行ってきたというシェフが、宮保明蝦球を出し、先に書いた焼きそばで本編は終了。
黒糖を使ったエッグタルトは、生地の軽さと香ばしさの中で玉子液がふんわりと溶ける優美があり、タロイモのデザートは、豆に通じる暖かみのある甘さが心をほぐす。
33階の特別食堂「ワールドトレードセンタークラブ」のシェフ、51歳とは思えぬ若々しさの藾さんは、誠実が顔に滲み出ている。
これだけ大きな箱で、精妙な料理を作るのは素晴らしい。
最後は、みんなでヤァ!