カレーの海にご飯の山がそびえ立つ。
海の中に浮かぶは、ゆで卵と牛バラ肉。
まずはカレーをスプーンですくって、一口。
インド人では到底作り出せぬ、日本的庶民の味が、舌を流れゆく。
山を崩し海と混ぜ、よくよく混ぜ口に放り込む。
味が抜けきった牛肉のわびしさがたまらなく、それでご飯を掻きこむ切なさは、若い奴にはわかるめい。
ゆで卵は、慎重に黄身だけを取り、一部カレーと混ぜ、残った白身の穴にはカレーを注ぎ込んで、一口で食べる。
福神漬けはご飯と混ぜて、赤く染まったご飯とカレーの味わいに、喜んでみたりする。
合成着色料鮮やかな青かっぱ漬けは、海に散らして、彩変化とポリポリ食感でアクセントをつける。
こうして次第に山は崩れカレー海に吸収されていく。
最後に残ったご飯で、皿に残ったカレーの痕跡を拭うようにして食べ終える。
多くのファンに惜しまれつつ一昨年の夏に閉店した「モンスナック」が、去年初頭に野村ビルで復活したという。