危険なメンチカツである。
通常のメンチカツはご飯が欲しくなるのに、これは猛烈に、赤ワインが恋しくなる。
原因は、京都「中勢以」より仕入れた、但馬牛の熟成肉を100%使っているからである。
メンチカツにナイフを入れ、口に運ぶと、肉汁と共に熟成した、甘くエロチックな肉の香りが、艶を帯びて鼻に抜けていく。
香りは、体内に眠りし野生を叩き起こし、官能をチクチク刺激する。
そこへフランス料理の丁寧で贅沢な仕事がなされた、深みと切れのある赤ワインソースがからみ、さらにエロさを増幅させる。
もう大至急赤ワインである。
飲めば、肉の香りがさらに膨らんで、うっとりと中空を見つめ、顔が崩れていく。
メンチカツだけでない、牛すね肉の煮込みも、ロールキャベツや豚肉のロースとも、熟成肉を使い、我々を魅了するのである。
しかもワインをガブガブ飲んでくださいと言わんばかりに、料理の値段が安い。
聞けば、今度は熟成肉を使ったカレーライスを企画中らしい。
増々危険である。