よく来ていたのは20代の頃だから、それこそ30数年ぶりに店に入った。
東銀座cccccccである。
昔も今も店員がメニューを渡しながら、「ムルギランチがおいしいよ」といって、半ば強制的に注文を確定してしまうところは変わらない。
今日も店内全員が、「ムルギランチ」を食べている。
若い頃はそれに抵抗して、「チキンカレー」や「キーマ」などを頼んでいた。
ある日、「ペッパースープ」というのを頼んだことがある。
すると店員が、「これは辛いからやめなさい」と、却下してくる。
辛さに自信があり、耐性もあった僕は反発し、押し通した。
あれはすごいスープだったなあ。
スープの上に、黒胡椒が大量に振られていて、中にも粒コショウが入っている。唐辛子の辛味も入っているのかもしれないが、それもわからないほどの黒胡椒量である。
胡椒の刺激で、口腔内と喉の粘膜が痛めつけられ、失神しそうになった。
幸い今はない。
さて今日はおとなしく「ムルギランチ」である。
しかし一捻りしたい症候群なので、「トマトスープ」と「グリンピース」も頼む。
「トマトスープ」は、スパイス香と辛味が効いたトマトスープである。
昔訪れたときに、インド人が「トマトスープ」をご飯にかけて、超格安な(今は650円だが当時は300円だった)食事をなさっているのを見てから、カレーに追加するようになった。
「ムルギランチ」は、注文して5分もかからないうちに出てくる。
しかしここは分かったもので、まず「トマトスープ」が運ばれた。
スープを飲んでいると、「グリンピース」が運ばれる。
そこですぐさま目配せをし、「ムルギランチ」をお願いした。
「ムルギランチ」はいつものごとく、店員が鳥ももの肉を、素早く骨から脱却させて、言う。
「よくよく混ぜて食べると、美味しいよ」。
さあ用意は整った。
「ムルギランチ」、半分飲んだ「トマトスープ」、少し食べた「グリンピース」である。
だが定員の教えに従い、よくよく混ぜない。
最初に混ぜ混ぜすると、味や食感は複雑になるが、均一化してしまう。
少しずつ様々なものを混ぜながら変化を楽しみ、最後に混ぜ混ぜするんだものね。
キャベツのサブジにスープ、ジャガイモにグリンピース、ご飯にスープをかけてカレーと合わせる、ご飯をスプーンに乗せてスープに浸す等、多種多様、千変万化、変幻自在の味を楽しんでいく。
後オススメの追加アイテムとしては、「アッチャル」と「パッパル」だろう。
もちろん最後は全てを混ぜ混ぜして食べるのさ。
そして立つ鳥跡を濁さず。
ご飯でダムを作りながら、ソース側に進軍して行くことによって、食後はこんな綺麗な皿となるのであった。