ある日、冷たい「甘エビのキッターラ」を食べた。
甘エビは、パスタと合わせられることがあるが、乾麺とは馴染まないように思う。
しかしふのりを練り込んだという手打ちのキッターラは、ねちっとつぶれ、ほんのりと海苔が香る。
そこへ甘エビがしなだれてなじみ、僕らを海の底へと引き摺り込む。
また「栗を詰めたトルテリーニ」は、カカオを練り込んだ皮の甘い香りが、優しい栗の甘みと繊細な甘みのストラッチャテッラチーズと溶け合い、森の気配を漂わせる。
ヨモギのラビオリもアンコウのロトロも、ヨモギの香りやアンコウのたくましさという、なにを食べさせたいかが明確で、それが心を打つ。
最近は、フレンチもイタリアンも30代前半で独立するシェフが増えてきた。
彼らの料理を食べて思うことは、若い時は、精力的に飛躍し、遊んだ料理をやって欲しいと思う反面、なにを食べているかわかる料理であって欲しいとも思うことが多かった。
「anima」の中村圭祐シェフも32歳である。
料理は個性的であるが、どの皿も食材に対して誠実に向き合っている。
この若い感性を、ベテランの金子支配人が支える。面白い店ができた。 閉店