「常連」という言葉に憧れる。
年間600数が外食で、内新店舗に毎年300店にいく僕は、互いが知っている店はあっても、常連だと胸を張って言える店がない。
先日西日暮里の焼鳥屋「小鳥」で、素敵な常連とあった。
70半ばの彼は、マーケティングコンサルタントで、店の裏に住んでいるのだという。
座るなり、何も言わずに大関の燗酒二合が出されだ。
「僕は364日燗酒です」と、おっしゃる。
「日本酒がお好きなんですね?」と、聞くと、
「君、体の中はあったかいんだよ。36℃台だよ。それなのに冷たいもん飲んだら、喉も内臓もびっくりしちゃうだろ。だから燗酒」。
そう、のたまわれた。
「でも364日ということは、1日だけは冷たいもの飲む日もある?」
「ああ仕方なく。この間ビールを飲んだ」。
「なぜですか?」
「決まってるだろ。その日は暑すぎたん」。
チャーミングなおっさんである。
北海道の企業と、コンサルティング契約を結んでいるのだという。
「なぜですか?」と、聞けは
「決まってんだろ。おいしいもんを食べるためだ」。
そしてつまみは、何も頼んでいないのに「茹でアスパラとマヨネーズ」がでた。
しかしこの茹でアスパラは、メニューにない。
「裏メニューですか?」と、聞くと、
「バカ言っちゃいけねえよ。俺だけのメニューだよ。まず最初はアスパラだろ。そして焼き鳥を食う」。
なぜ最初がアスパラか知らないが、妙な説得力がある。
僕はといえば、さつま揚げを切ってパン粉をつけ、ニンニク油で揚げた「さつま唐揚げ」の下品さに咽び泣きしながら焼酎ハイボールを強かに飲んだ。
「いやあ今日は話が弾んだ。これ以上弾みたいが、するってえと、もう一本酒頼まなきゃならなくなるからな。お勘定して」。
お勘定は、2100円だつた。