門上様、おでんの季節ですね。僕はこの時期になると、おでんのことばかり考えています。
おでんは、江戸末期に江戸で生まれ、大正時代に「関東炊き」と呼ばれて関西にも広がり、その後関西風が東京に広がったとされています。
違いは大きく三つあって、鰹出しと昆布だし.タネの違い、つゆの色(醤油の色)の違いですね。
どちらも愛していますが、最近は東京でも関西風が主流で、関東風は絶滅危惧種となりつつあります。
その中で関東風の味を守っているのが、大正十五年創業の浅草「丸太ごうし」です。
店に入れば真っ黒なおでんつゆの中で、タネが気持ちよく浸かっている。
まずは大根、つゆが染みて茶色くなった大根を箸で割り、芥子をつけてハフハフとやれば、幸せがやってくる。
そして豆腐やちくわ、コンニャクと進んでいきますが、東京ならではの、忘れてはいけないタネが「ちくわぶ」です。
小麦粉を練ってちくわ型に成形した「竹輪麩」は、ねちょっとした頼りない食感に濃いつゆが染み込んだ味が切ない。
それはまさしく気取りのない、昔っからの東京の味で、熱燗とやれば、これぞ心の銭湯だなあとしみじみ思うのです。