さあ刺身の後は鍋である。
熱々の鍋に伊勢海老がぶち込まれる。
透明な身が、純白に変わったところで引き上げ、かぶりつく。
甘みの品がいい。
エレガントな風味が溢れ出て、穏やかな気分になる。
胴体や味噌、脚と食べ進んで気がついた。
胴体よりも脚がうまい。
細い細い脚先まで身が詰まっていて、どんなに細くても身がしっかりして甘い。
直径2mmくらいでも、存在感がある。
海底の岩をしっかりとつかむためか、蟹よりマッチョなのである。
だからはっきりと宣言しよう。「伊勢海老は脚がうまい」。
そのため、殻ごとしがんで潰してはいけない。
脚先は、爪をちぎって慎重に抜けば綺麗に出てくるし、それ以外は節をちぎって抜けば、蟹より筋肉質なので、簡単に抜ける。
片っ端から脚を抜き出し、並べてみた。
それを、鍋にさっとくぐらせ食べる。
うまい。
エビの風味が凝縮した、笑いが止まらぬ雑炊に、脚を入れて食べる。
うまい。
こんな食べ方を楽しめるのも、池ノ浦の海が滋養に富んでいるからだろう。
「ありがとう」。
部屋から見える海に向かって、深々と感謝した。