「江戸前」の語源は鰻にある。
江戸の前で獲れた鰻を指し、以外で獲れる鰻を「旅鰻」と区別した。
しかしここでは、背開きに割き、素焼きして蒸し、タレをつけて焼く、江戸の仕事に着目したい。
焼き一生と言われるように、一番仕事の差が出るのが焼きである。
余分な脂を落として、表面をかりっと、タレと馴染ませ、ふっくらと仕上げるのを理想とする。
一つの目安としては、身側の焦げが少なく、飴色に満遍なく焼けていること。
皮側に星のような焦げが点在していることにある。
タレをつけてから皮を一回しか焼かぬ店も多いが、万遍返しをしながら、皮もしっかり焼かれていてこそ、おいしい江戸前の蒲焼きとなるのである。