小麦が生地に、ダンスを踊らせている。

食べ歩き ,

小麦が生地に、ダンスを踊らせている。
大きなベーグルを、よいしょと千切り、口に放り込む。
カリッと香ばしい表皮が弾け、歯が生地にめり込んでいく。
その途端に歯は、押し返される。
噛む。押し返される。噛む。押し返される。
もはや、モチモチっという言葉が陳腐に思えるほど、生地に根性がある。
噛んで噛んで滲み出た自然な甘みが、ようやく喉に落ちると、口の中には小麦の優しい香りが広がっている。
小麦はブレンドせずに、はるゆたか、キタノカオリ、春のいぶき等、北海道産の小麦を単独で使い、特長を出す。
そして油も糖分も一切使用せず作り上げる、お茶の水「ベーグルビーバー」のベーグルは、パンとはなんであるかを、我々に問う。
「ネットで書いてもいいですか?」とたずねると、
「ええ是非お願いします。開店して1年半になりますが、ごらんの通り、いつも閑古鳥がないていますから」と、実直そうなご主人が苦笑いをした。
おみやげにも買った。
たった二個しか入っていない紙袋は、いま、手に、ずしりと重い。