もはやポトフと呼んでほしくない。
いや、それはまごう事なき、「ポトフ」だ。
ポトフが持つ、家庭料理の温かさと懐かしさ、毎日食べても飽きない普遍性は、このスープの中にはある。
だが一方で、上質なコンソメや上湯に通じる、時間をかけて上質な肉の粋だけを集めて生まれる、揺るぎない滋味もある。
「ふぅ〜」。「あはぁ〜」。
一口飲むたびに、言葉にならない充足のため息が漏れる。
本当に美味しいもの、本当に滋養を感じる料理は、「おししい」などという言葉は出ない。
本能が発する、感嘆の喘ぎが洩れるだけである。
フランス産のほろほろ鳥で撮られたそのスープは、鼈甲色に輝き、人間の体を鼓舞する。
肉と繊維と脂と骨から抽出された養分が、溶け合い、交じり合い、均整美となって、心を打つ。
シャトーに切られた、ジャガイモ、カブ、ニンジンは、ギリギリに形を保っていて、噛めば跡形もなくきてしまう。
肉は猛々しく、気品漂うスープの中で、自らの血肉を分けた旨味を誇る。
ああ、出来うることなら、毎日いただきたい。
Pot-au-feu de ancienne aux pintade et legume d’hiver
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