東京とんかつ会議 番外編 高知市「ぽるころっそ」上ロースカツ定食1600円
[肉3油3衣3キャベツ3お新香3ソース3味噌汁2ごはん3特記なし23点] 各項目3点満点特記1点総計25点
高知はとんかつ過疎地である。食べログで調べると、県内にはチェーン店も含めてわずか13軒しかない。とんかつラーメンやカツ丼の人気店はあるのが、とんかつを単体として食べる食文化がないようである。
この完全アウェー状態にあえて立ち上がる男がいた。人気パティスリー「マンジェササ」のオーナーである笹垣さんである。
おいしいとんかつ店を作ろう。そう思い立った彼は、全国100軒ほどのとんかつ屋を食べ歩いたという。そして理想のとんかつ屋を目指すべく、自らのパティスリーの隣に店を作った。鍋前に立ち、揚げるのは、彼自身である。
豚は四万十豚を使う。分厚く切られたそれを、何もつけずに噛もうとすると、甘い香りがふわりと漂った。揚げ油ラードの香りである。噛めば肉はきめ細やかで、肉自体の旨味にあふれている。背脂もすうっと溶けて、甘い香りを残しながら消えていく。和らいが、柔らかすぎることなく、噛む喜びがあるとんかつと言えよう。
中心も、右端の脂が多く濃い味のする部分も、申し分なく堪能できる。肉にピタリと密着する衣は中粗で、サクサクと脂切れがいい。都内有名店がこぞって使う中屋パン粉工場製だという。この軽やかな衣とたくましい肉との対比がいい。
脇役陣も素晴らしい。ご飯は甘く香り、キャベツは細くみずみずしく、お新香は自家製ぬか漬け、ソースはくどくなくほど甘辛くと抜かりがない。
味噌汁は、香りが立っていいが、もう少し軽くした方がとんかつが生きると思い、あえて2とした。
特記は「なし」としたが、一度煮たバラ肉を揚げた「バラカツ」。笹垣さん自ら仕込んだカレーと合わせた「カツカレー」、「肩ロースカツ」、「ソースカツ丼」など、今回は食べていないが、そそられる料理が数多くあるので、特記としてあげられるだろう。
しかも安い。東京との比較では、公平ではないかもしれないが、銘柄豚を使い、200gの定食で1600円は、お値打ちである。
とんかつ後進県にもかかわらず、都内有名とんかつと肩を並べるとんかつ屋が高知にはある。このことを高知の人は誇っていいと思う