先日明治38年創業の「みますや」に出かけた。
裸電球の鈍い光の下で、黒光りする梁や柱、客の愛着と酒が染み込んだテーブルが、心地よい。
時がゆっくりと過ぎていく。
江戸情緒が息づく店だが、女性店員の二人が、中国の方だった。
昔の僕だったら、せっかくこんな古い居酒屋に来たのだから、日本人を使って欲しいなと、思っただろう。
しかしこれはすごいと考えたのである。
ここは日本酒の銘柄がたくさんある。また肴の数も多い。
それを間違いなく復唱し、注文を通し、運んでくるのではないか。
日本人か北京の居酒屋で働き、中国語で注文された料理や白酒を、的確かつ迅速にこなせるだろうか。
否。
考えただけでムリ。
彼女たちの能力は、素晴らしい!
だって「季節のヌタはなんですか?」と聞くと、
「ニラとまぐろです」と、即答するのである。
驚異的である。
途中水を頼んだら、「また水をですか?」と言い返された。
だが怒ってはいけない。
日本語の微妙な機微を理解していないので、おそらく彼女たちにとっては、「ワンスアゲイン?」のような意味で言ったのだから。