突然、ディープキスをされた。
そいつは、唇に、舌に、上顎に、身をよじらせながら、てろんとからみついてくる。
「ねえ、私のこと好きになっちゃう?」と、囁きながら、ねっちりと甘えてくる。
ポルチーニの笠のパスタである。
甘えた後はとろとろに溶けてしまう。
香りだけを残して消えてしまう。
あの妖艶は夢だったのかと、またパスタを口にすれば、いきなり茸が舌を絡めてくる。
茸に舌はない。
舌はないが、明らかにあれは舌であり、ディープキスの誘惑だった。
一方近江牛のヒレと合わせたソテーは、また違う。
口の中にそっと滑り込み、香りがむんむんと膨らんでいく。
自分が菌床になったかのような感覚で、口いっぱいに胞子が舞っている。
きっと明日目覚めれば、舌からポルチーニが生えているだろう。
「ブリアンツァ」にて。