神田須田町 ぼたん

食べ歩き ,

神田須田町 ぼたん
明治三十年創業。風格漂う日本家屋は、東京都選定歴的建造物である、戦火を潜り抜けた昭和三年来の家屋。
下足番に靴を預け、中居さんに案内される二階は、趣のある欄干やガラス窓が配された、大座敷。二列に並んだ鍋を、客が相向かいで食べる雰囲気は、江戸の気取らぬ風情があってよい。
角火鉢に四角い鉄鍋を乗せて炭で熱し、「鳥すき焼き」六千七百円を食べる。
中居さんが手際よく、筑波産の鶏の胸肉ともも肉、叩き肉、もつ類、葱、焼き豆腐、白滝を入れ、割り下を注いでくれる。
東京風のこっくりと濃い、甘辛い味わいに染まった、しっとりと柔らかい肉を、溶き卵につければ、笑みが自然と浮かぶ。酒が進むこと、この上なし。味が濃ければ、薄割りで調節を。
最後はご飯。残った鶏肉で掻き込んでもよし。おじやにしてもよし。鍋に残った割り下に、卵を落とし、ふわりとご飯に載せてもうまい。
大広間一杯に漂い溢れる、割り下の香りと客の活気は、格別の雰囲気。