口にするだけで地味

食べ歩き ,

ごぼう。
なにかこう、口にするだけで地味である。
しぶといたくましさは感じるが、よだれは出てこない。
見事なほどに、インスタ映えしない。
FB投稿でも反響が弱く、”いいね”は少ないだろう。
愚直と評したい味は、華麗や色気とは、一生無縁である。そう思っていた。
しかしここに、エレガントなゴボウ料理がある。
トリュフが乗ってるからではない。
牛蒡が違う。
ふかふかの土地で育てられ、一年間低温熟成させたという牛蒡は、しなやかに甘い。
えぐみや土臭い香りは一切感じられず、柔軟で静かな甘みだけが舌の上を流れていく。
出始めの筍に似た、いたいけな甘さがあって、食べていると心が焦らされる。
あまつさえそこへキノコの香りが加わって、妖艶な森へと引き込まれるのであった。
「帯広 和田ゴボウと平茸のフリカッセ トリュフ風味」
札幌「ラ・サンテ」にて