わたしが「プリモ・ピアット」に通う理由は、愛してやまないヴオイエロ社のスパゲッティに出逢
えるからである。
都内の店で一番よく使われているのは、ディ・チェコ社のスパゲッティーニというやや細めのタイ
プで、ソースのからみがよく、パスタ自体の味や香りが実にいい。
ただ時折、無性にヴォイエロのパスタが食べたくなる。
ナポリの潮風とベスビオ火山のミネラル水によって育てられたこのパスタのアルデンテは、中に芯を感じるような歯ごたえではない。
スパゲッティ一本一本に弾むような力強さがあって、思い浮かべると無性に口にしたくなるのだ。
そいつをぎゅっぎゅっと噛みしめていると(そう、まさに噛みしめるという感覚)、粉自体の旨み
が引き立ってくる。
それにこの店では、ヴォイエロの103番という中太スパゲッティを使っているので、余計に噛みごたえと粉の旨みが堪能できるのである。
春なら、旬のあさりを1人前18個ほど使ったボンゴレ”をおすすめしたい。
そして、できるなら大盛り(昼1100円、夜1200円)を注文して、存分にパスタを味わいたい。
大盛りは150グラム。ゆでて250グラムほどにもなったパスタが、あさりの甘い香りと湯気をたてな
がら、赤と白のギンガムチェックのテーブルクロスに、ドンと置かれる。
プックリとふくらんだあさりと艶々と輝くスパゲッティ。あさりの滋味と白ワインの旨みが溶
け合ったソース。パスタ好きならたまらなくなる光景だ。
後はただひたすら食べるのみ。大盛りといえど、最後の一本まで力をみなぎらせて、パスタ
の本領を発揮してくれるはずである。