東京のフレンチシーンが、面白くなってきた。
今年に入り、最低コース1万円以上の高級店が、次々と開店したのだ。銀座「esquisse」、新橋「ラフィネス」、西麻布「アムール」、銀座「レカイヨ」の4軒。]
しかもシェフは皆30代という、創造的躍進が期待される世代である。
中でも「esquisse」が素晴らしい。
シェフのリオネル・ベカ氏は、新宿「トロワグロ」で5年半仕事をした。その中で日本の食材と食文化への理解を深め、得たインスピレーションを、新店で見事に開花させている。
純度を高めたフォアグラと桃を合わせた皿へ注がれる、鰹節ならぬ鴨節の出汁。
手長海老と仔兎の命を華やかに包む、甘夏の香りと酸味。
フランスでも数々の日本食材や技術が用いられるが、これほど敬意が深く、かつ消化して、新たな天体を生み出すシェフはいない。
しかも鳩のサルミソースに隠された、イタリアンパセリの香りのように、故郷の地中海や、フランスのエスプリが込められた料理は、我々