「ハーフ丼」 

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京橋の横丁にひっそりとたたずむ「京すし」は、木造一軒屋、瀟洒な店構えのすし屋である。店に入れば、椅子やカウンター、テーブル席などがしっとりと空気に溶け込んだ、古い店ならではの落ち着きが漂っている。風格があり、一見敷居が高そうな雰囲気があるが、昼時は近隣のサラリーマンが気軽に暖簾を潜っていく。お目当ては、四種類揃う丼だ。

丼は、「鉄火丼」千円、「アジ丼」、「サバ丼」「イナダ(ハマチの時もあり)丼」各九百八十円で、酢生姜ともみ海苔を散らした酢飯の上に質の高い魚の切り身をのせて供される。さらには品書きにはないが、常連たちの間で人気が高いのが「ハーフ丼」といって、二種類の魚を盛り合わせた丼である。ある日わたしも常連に習い、イナダとのマグロのハーフ丼をお願いした。

染付けの丼の表面を覆うように、包丁の切れのいい切り身が約九切れずつ並べられる。鉄分が舌に乗ってくるマグロの赤身と脂が程よくのった身を活からしたイナダ。いずれも質が高く、鉄分や脂分がほの甘い酢飯と口の中できれいに馴染みあう。

一切れずつ醤油に漬けて食べてもよいが、わたしの食べ方は、香り高いわさびを一切れ一切れにのせ、さらにほんの少量わさびを溶いた醤油を、かけすぎないように気配りしながら回しかける。しかる後、一気呵成に掻き込むのだ。イナダ、マグロと交互に食べれば実に楽しい。

食後が清清しくなる、老舗のお値打ち丼である。

 

「京すし」

「ハーフ丼」

東京都中央区京橋2丁目2-2

03-3281-5575
11:00〜14:00/17:00〜20:00