アナグマは

食べ歩き ,

アナグマは、噛めと言っていた。
噛んで噛んで、じっとり噛んで、俺の滋養を味わいつくせと叫んでいた。
豚肉の優しさはあるが、甘えはなく
鴨の猛々しさはあるが、血に飢えておらず
牛肉の豊かさはあるが、気取っていない。
他の生き物の良さを備えながら、俺は俺、と言う。
食べる我々の体内に眠る獣性に火をつけながら、どこかいたいけで、罪深き思いがよぎる。
それは、可愛い顔や体躯を思い浮かべるからか。
身勝手な人間の思いで、愛らしいと思うからか。
それとも、自然と共生してきた日本人としての性を起こし
自然への恐れと敬いが芽生えるせいか。
門前仲町「パッソアパッソ」で、アナグマに齧りつきながら、考えた。