ビビンバのおいしさを導いてくれた、三人の女性。

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三人の女性が、僕にビビンバのおいしさを導いてくれた

「だめ!混ぜ方が足りない」。

そう厳しく指導されたのは、西新宿「オンマキッチン」のオンマである。

ご飯の白い部分を残さないように、さっくりと、徹頭徹尾、完膚無きまで混ぜていく。

「それがおいしいさを生む」と、教わった。

混ぜて生まれる第三の味「ビビダ(混ぜる)」と、「パプ(ご飯)」が合わさったビビンバ(正式にはビビムパプ)は、混ぜることによって真価を発揮する料理なのである。

 

続いて、ナムルで味が決まること教えてくれたのは、経堂「山村」のオンマだった。

作りおきをせず、熟練した手加減で野菜から水分を抜き、指先で味を染み込ませた、”手の味”が生きたナムルでなくてはいけないのだという。

確かに山村のナムルは、みずみずしく、香りがあって、ビビンバの力強さを後押ししている。

 

次に味噌の重要さを教えてくれたのが、「古家庵」のオンマだった。

店の自家製ヤンニョムジャンを一口なめてみると、煉れた味わいの中から、数々の旨味が複雑に混じりあった奥行があって、思わずうなる。

その風味がご飯の一粒一粒に染み込むように、丹念に混ぜて食べるとどうだろう。

ほっと和むような、母親の慈愛を感じさせるやさしい味となる。

たとえ食文化が異なろうとも、愛情が込められた料理には、共通する力強さと温かさが宿る。

そんなことを教えてくれるビビンバである。

 

 

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