悩んでいる。にやけながら、悩んでいる。
玉子サンドか塩にぎりか。
白いパンに挟まれた黄色い玉子からは、ラードの香りに交じって甘い玉子の香りが立ち上り、顔を包む。
ごくっ。
思わず喉が鳴った。
端正に並んだおにぎりは、米粒が艶々と輝いて、早く食べろと誘っている。
ぴくり。
思わず手が動いた。
玉子サンドに齧りつけば、歯はパンにめり込んで玉子に触れ、押し出された玉子が、口いっぱいに広がる。
ははは。笑わずにいられようか。
ラードのコクと空気を吸って、とろりと炒められた玉子の甘いこと。
パンに塗られた辛子バターがヒリリと効いて、玉子の甘みを際立てる。
パンは、玉子の熱気に負けぬよう、他のサンドよりちょいと厚めで、玉子でほんのり温められ、いっそうなじんでいる。
玉子とパン。どこにでもある素材が生み出した、奇跡の幸せがここにある。
方や塩にぎり。
一つ持って顔に近づける。甘い米の香りが鼻に漂う。
たまらぬ。
口をあんぐりと開け、三角の頂点に齧りつく。
一致団結していた米が、はらりと崩れ、舌の上に着地する。一噛み。二噛み。
誰か顔が崩れるのを止めてくれ。
塩が引き立てた米の甘みが、噛むごとに膨らんで、上昇する。
おにぎりは塩にぎりが一番。
米と塩だけで、生きている喜びが湧き上がるのだから。
両者とも、手づかみというのがいい。
手の味に加え、口を大きく開けて食べるのもいい。そうして食べれば、生に感謝する。
米と玉子に敬服する。
そんな料理のどちらかを選ぶなんて、ああ、僕にはできないなあ。