もめんのお椀を一口飲むと、心が軽くなる。
一瞬体中の毛穴が開いて、筋肉が弛緩する。
安堵がゆっくりと、体に降り積もる。
それは疲れた体を温泉に沈めた時のようであり、母親に抱きしめられたようであり、愛する人に微笑みかけられたようでもある。
最上質な出汁なのだろうが、気が張り詰めていない。
ゆっくり休んでいってな。
仲良うしよな。
そこに自我は一切なく、いたわり、思いやる心だけが漂っている。
筍と蕗、湯葉しんじようのお椀だった。
しんじょうは、ほどけ、くずれて、つゆに溶けていく。
湯葉の淡い甘みと抱き合ったつゆは、ことさら優しく、丸く、無垢になっていくのだつた
体中の毛穴が開いて、筋肉が弛緩する。
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