＜シリーズ食べる人＞とんかつ屋編
隣に座ったのは、女子大生（たぶん）だった。
二人とも背がすらりと高く、面長できれいな顔立ちをしている。
何を頼むのかとみていると、「カツ丼二つください」と、可愛い声で頼むではないか。
おっさん2人が頼んではないではない。
うら若き女性二人が、銀座でカツ丼である。
なんて素晴らしい。
世の中捨てたもんじゃないなあ。
カツ丼が運ばれると、一人が写真を撮る。
Nikonの一眼レフで真剣に撮る。
そして彼女達は、黙々と食べ始めた。
時折、「おいしいね」と、無言で目配せをしている。
オジサンは、嬉しくなった。
彼女たちは、一心不乱に食べ終えると箸を置いた。
丼には、米粒一つ残っていない。
パチパチ。
君たちには「東京とんかつ会議」から表彰状を送ろう。
いい迷惑かもしれないけれど。
だが食べ終えたお膳に、なにか違和感がある。
気がついた。
二人とも、お新香にまったく手を付けていないのである。
①揃ってお新香アレルギー
②生まれてからこのかた、お新香を食べたことがない。
③子供の頃無理矢理食べさせられてトラウマになった。
④最近の女子大生は、お新香を食べる習慣がない。
⑤塩分を控えている。
⑥日本人に見えたが、実はドイツ人。
⑦お新香を禁忌する宗教の信者。
⑧カツ丼を愛するあまり、お新香を食べるタイミングを失った
⑨よしもとばななの「キッチン」が好きだったから
⑩お新香屋の彼氏と別れたばかり。
様々な理由を考えるがわからない。
カツ丼を食べるほどの食いしん坊なのに、なぜお新香には触ろうともしないのか？
オジサンには、まったくもってわからないのであった。