キ ャ ベ ツ ロ ー ル 千四百円
「ロールキャベツとは、キャベツを食べるものだ」。
この店でキャベツロール(ストロバヤではキャベツロールと呼ぶ。英文法的にはこの方が正しい)を食べながら、ふと、当たり前のことを、当たり前のように確信した。
ロールキャベツと聞くと、思い出すのは、ケチャップが入った甘めのソースと、楊枝が刺さった俵型のロールキャベツ。
大方の人は、家庭で食べたこんな姿を思い浮かべるのではないだろうか。
まだ多少筋っぽさの残るキャベツに、ナイフや箸がうまく入れられなかったり、もう少し肉を多くしてくれてもいいのにな、と思ったり、最後に残ったソースに御飯を入れて、グチャグチャに混ぜて食べるのが好きだったり、キャベツがトロリと柔らかくなった、翌朝のロールキャベツがたまらなくおいしかったりと、人それぞれに、ロールキャベツへの想いがあるのではないだろうか。
だが、その想いを抱いたまま「ストロバヤ」でキャベツロールを頼むと、ちょっと面食らう。
何しろ形が四角い。厚さ四センチ、縦十センチ、横八センチ程に包み込まれた二つのキャベツロールが、寄り添うようにして、皿に重ねられているのだ。
その上には温めた牛乳がかけられ、横にはきめの細かいマッシュポテトを従え、下には、ケチャップを想起させない、赤みを帯びた柔らかな橙色のソースが敷かれている。
その端正な姿に、
「これは中々手ごわそうだぞ」。と慎重にナイフを入れようとすると、キャベツロールは何の抵抗もなく、スッと切れてしまう。
ナイフ越しに感じた、キャベツの柔らかな感触に慌て、急いで口に運ぶと、キャベツは甘みとともに、クニャリと口の中で押しつぶれる。
優しい、優しい感触である。酸味と甘みが程よいバランスを保つソースや、牛挽き肉に、炒めた玉葱やご飯の甘みを加えた中身の具も、その優しい感触を増幅させる。
味だけではない。浅草の喧噪から離れた、静かなこの店で、穏やかな女性給仕人に支えられながら食べていると、なおさらじわじわとうまさが膨らんでいく。ゆっくりと食べ進むと、夢見心地になるようなキャベツロールである。
さて、そんな気分を締めくくるためには、自家製パン(二百円)を頼もう。最後に香ばしいパンを引き千切り、ソースをたっぷり拭って食べるのだ。
2022年 1200円!