東京とんかつ会議 第40回 殿堂入り審議
池上 「燕楽」のロース定食2000円
<肉2、衣3、油3、キャベツ3、ソース2、ご飯2、新香3、味噌汁3、特記1【カツランチ850円】、計22点>
前回
<肉2、衣3、油2、キャベツ3、ソース3、ご飯2、新香3、味噌汁3、特記1【ポテトサラダ】、計22点>
二回目の登場である。「東京とんかつ会議」も40回を超えた。そこで過去20点を越えた店を定期的に回り、再び3名が20点越えと採点した店を「殿堂入り」とする。
いかにも町のとんかつ屋さんという風情で、ご家族で営む店内も、温かい空気に包まれている。
とんかつを頼んで待っていると、「トントントン」というリズミカルな音が聞こえてくる。キャベツを切る音である。この音を聞きながら、胸を弾ませ、まだ来ぬとんかつに思いを馳せる。なんと素敵な時間だろう。
切り置きせず、注文ごとにキャベツを切る。当たり前のようでいて、中々できないこの仕事が、この店の誠実を表している。
「ロース定食」2000円は、堂々たる体躯。肉がうっすらと汗をかき、早く食べよと誘っている。二つの鍋で揚げるかつは、やや突っ込んだ揚げ方で、衣の一部が茶色い。
なんといってもこの店の魅力は衣である。ラードの香り高き衣はきめ細かく、肉に密着して、噛めば、サクサクッと軽やかな音が立ち、歯が包まれる。衣は口の中で舞うように踊り、この軽快なステップと肉の重厚な食感との対比が、「とんかつを食べているぞ」という思いを膨らませる。
揚げ切りよく、脂っぽさがなく、キレのいい食後感。ラードの質の高さと揚げる技術の高さだろう。ロースの脂部分もきっちりと火が通って、食感がいい。
胡瓜、大根、蕪(蕪はロース定食のみ)糠漬けの漬け具合がよい。根菜がたっぷり入った豚汁も上等。ご飯もおいしい。
そしてキャベツ。食べれば青々しい香りが広がって、みずみずしく、なんとも甘い。39軒食べたとんかつ屋の中で、最上級ではなかろうか。甘味と酸味のバランスの取れたソース、自家製マヨネーズのポテトサラダも含め、日本が誇る、正統「和定食」の正しき姿である。
今回は、「ヒレ定食」2000円、「とんかつ定食」1200円、「ランチカツ定食」850円、もいただいた。「ヒレ定食」は、甘い肉の香りが高く、そのヒレの薄いサイズを上げた「とんかつ定食」もいい。そして「ランチカツ定食」850円は、薄い肉というだけで、肉、油、衣、キャベツといった「とんかつ定食」の醍醐味充分。いま巷では、安井には理由があるということを知らぬ、間違ったコストパフォーマンス論が独り歩きしているが、これぞその名にふさわしい食事である。