また素晴らしき変態に出会った。
今度は藤沢、「茶馬燕」の中村秀行氏である。
「南三」、「蓮香」、「Matsushima」と同じく少数民族系を主体とするが、一旦自分の中で消化してから、あるものは現地と同じものを使い、あるものは日本の食材に変えたほうが面白いと思えば、それで表現する。
つまり変幻自在の変態なのである。
たとえばこの料理には、「猛毒豆腐」という恐ろしい名前が付いている。
中国料理名は「湖南魚子豆腐」というように、発酵させた川魚の白子や卵巣で作る麻婆豆腐のようなものらしいが、それを金沢の珍味、フグの卵巣の糠漬けで代用するのである。
いやもはや代用とは言えないだろう。
練りに練られて熟れた、強烈な塩気が溶け込んでいて、一筋縄ではいかない。
泥沼に引きずり込んで離さない麻婆豆腐であり、これは紹興酒では対抗できんと思い、思わず白酒を頼んでしまった。
うむいい。癖のある発酵食大好きおじさんとしてはたまりません。
その他発酵ハーブソースの貴州風ドボンをアンコウでやったり、発酵米や中国南部の納豆トゥアナオを自分で作ったり、南ペー族風山羊乳のチーズも自分で作る。
いいぞ変態。
店内の黒板にはそんな片鱗が伺える品書きが書かれている。
だがここが藤沢。
「みなさん、普通の麻婆豆腐しか頼んでくれないんですよ」と、店主は苦笑する。
大丈夫、本も出ることだし、間違いなく変態のお客さんはやってくる。
泉さん、さとうこうじさん、変態の店行きましょう。
また素晴らしき変態に出会った
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