今まで多くの肉と花山椒を食べ合わせて来たが、これほどまてに自然と成す肉はない。
脂の純白が、新雪のように輝いて、目の前を明るくさせる。
スッポンだしの中に沈められると、脂はすぐさまチリチリと縮まった。
そこに溌剌とした緑を放つ、花山椒を入れる。
一呼吸。くたりとなりかけたところで、小鉢にとる。
熊脂の、深く、潔い甘みが広がった刹那、花山椒の香りが吹き抜ける。
鼻腔を目覚めさせ、口中を清らかにし、細胞を活性化させる香りと、熊の滋味か混ざり合う。
目を閉じれば、そこは深山の只中である。
天然同士が抱き合って生まれた、人間の力など及ばない、純粋なる天体がある。
牛肉や豚肉では、到達できない味わいであり、清らかさである。
おいしさ以上に、厳然と目の前に広がる自然の力に、畏敬の念を抱く。
ふと思った。これをジビーフでやったらどう感じるのだろうかと。
新保さん。どうですか?
自然と成す肉
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