前菜は、「炭火で軽くあぶった鰆、エコファーム浅野から届いた牛蒡とそのピュレ 焼きそら豆とその葉」。
子供の悪戯描きのように、牛蒡のピュレが皿になすりつけられ、鰆とそら豆、空豆の葉と花が散らされる。
炙った鰆の香りと牛蒡の香りが共鳴する。
空豆とその葉と花の甘い香りが、鰆の甘みと抱き合う。
なぜ牛蒡の土の香りと、炙った香りが合うのだろう。
火で焼くという原始的な調理と、生命の源である土に対する互いの敬意か、あるいは食と向き合った原始の人間としての目覚めが、記憶の奥底から呼び起されたのか。
牛蒡が持つ、自然のたくましさと優しさが、鰆と空豆ともに、高みに登っていく。
どうしてこんな店がなかったんだろう。
コレド室町2に新しく出来た「ラ・ボンヌターブル」。
店の紹介は、生産者とお客の距離を近づける。野菜を中心としたこだわった食材がいただけるといった風に紹介されていくのだと思う。
でもそれらは、この店の一面でしかない。
最新のスタイルと技法で、知的好奇心をくすぐる盛り付けながら、料理に温かみがある。
農家の叔母さんの家に招かれたような思いやりが、ほっこりと心を温める。
都会と田舎。モダンとオーソドックス。先鋭と素朴。
相反する要素が、皿の上で自然に同居する。
そういえば、こんな店はなかった。と思う。
子供の悪戯描きのように
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