君は僕の口から逃れようとしているのか? それとも舌を誘い、まぐあいたいのか?
口に入れた途端に、足長ダコの動きが激しくなった。
上顎や歯肉に吸いつき、舌の上で悶える。
しばらく噛まずに、タコの思うがままに、蠢くだけ蠢くにまかせていた。
すると君は、おとなしくなった。
噛む。
くにゃりとよじれた身に、歯が入っていく。
微かな微かな甘みがにじみ出て、のどへとおちていく。君自身もすべるように消えていった。
何もなくなった口の中は、君の肌の感覚だけが残されて、ざぶんと遠く、潮騒が聞こえた。
韓灯にて