次々と繰り出される肴が、酒を飲め飲めいと囁きかける

食べ歩き ,

次々と繰り出される肴が、酒を飲め飲めいと囁きかける。
鱧の炙りに始まり、蒸し鮑で冷酒をいき、妖艶なる鮪のトリュフ塩マリネ卵黄がけで、喜久酔特別純米と移る。
そしてこれまた舌にねっとりとからみつく、三日間漬け込んだ酔っぱらい鬼海老の熟れた甘みにのけぞっては、燗酒にし、魚のとろんとした甘みとご飯の甘みが抱き合う、ノドグロの蒸しずしを酒の甘みと出会わせる。
鮑の肝コロッケの深さに、意味もなく酒だ!と叫び、
アラのたくましさを酢飯が受け止める、アラの握りで酒をくれと懇願す。
そして紅ズワイガニのかに味噌を、酒だけで炊き込んだというかに味噌は、塩気の向こうから、蟹のエキスと香りが襲ってきて、お前には酒しかないだろうと説くのである。
これで、当日現れし攻撃陣の半分以下なのだから参っちゃう。
メッシ、イグアイン、アグエロ、ディマリアに、ロッペンとリベリを加えても、まだ半分なのである。
もはやここまでいくと、酔わないのかもと錯覚させる肴の連続が、心を溶かし、非日常へ誘い、官能も身体も弛緩していく。
そして締めは「超玉子かけご飯」と、「鶏そば」。
その話はまた今度。
めくるめく「器楽亭」の夜。