誕生日といえば、そりゃあ当然、誰がなんといっても「すき焼き」である

食べ歩き ,

誕生日といえば、そりゃあ当然、誰がなんといっても「すき焼き」である。
というわけで、昨夜は「人形町今半本店」に出かけた。
ドラピエで乾杯の後、前菜、お造りに続いて「すき焼き様」が登場する。
艶やかな姿を見せるサーロインとリブロースに、惚れ、春野菜に眼を細める。
炊いていただくのは、石井さん。
彼女の巧みな炊き方で、肉も野菜も割下に馴染み、舌の上で生き生きと喜びを膨らます。
また軽妙洒脱な会話で、すき焼きの場が一層盛り上がる。
サーロインの一枚目は軽く、二枚目は片面良く焼きで炊いてもらい、その味わいの違いを楽しむのであります。
今回の割下は創業120年記念として、昔ながらのザラメを使った、甘みのコクが深い味わいで、食べるとなにやら気持ちがほぐれていく。
特にリブロースは、脂が少ない分、割下が肉に染み入って、濃密な味わいとなり、それが黄身にからむと、もうたまりません。
「やめて」と呟きたくなる、陶然となる味わい。
さらにここのすき焼きは、野菜がうまい。
曲がりネギに、聖護院カブ、羽子板型に切った長芋、香り高い筍、芹に椎茸。
野菜を食べる喜びと季節を伝えてくれる。
そしてもちろん今半ならではの、丁子麩としらたきも忘れてはいけません。
しめは割下と卵で、ふわふわ卵かけご飯。
すき焼きをした鉄鍋に割下をいれ、卵でふわりと閉じる。
石井さんのそれは、黄身の黄色、白身の白、割下の茶色が分かれ、一部少しグラデーションとなった、素晴らしい仕上がりで、ふきのとうの佃煮をはらりと乗せて、あとは一気呵成。顔が崩れるのであります。
最後は特製バースデーケーキも、ごちそうになりました。
なんと割下で作ったバウムクーヘンで、外側のカラメル状になった硬い部分をかじれば、ほのかに割下の味わいがある。
まさにすき焼き屋ならではの遊び心、いやあまいったなあ。