〜静岡にあって江戸前〜
82歳の鰻職人である。
病気されてから、やや手元がおぼつかないが、今日も八匹のうなぎと10数匹のドジョウをさばかれた。
小田原鴨宮「正直家」劇場は、炭をおこし、包丁を研ぐとこから始まる。
ではその一部始終を、ここに記そう
① 12時 店に入る
② 炭をおこし始める
③ 砥石を研ぐ
④ 大小二本の包丁を研ぐ ここまでで15分」」
⑤ 12:18分ドジョウを取りに行き、割き始める。中指と人差し指の間にドジョウを挟み、開きにする。割き立てドジョウはなかなか食べられぬ
⑥ 12:44 ドジョウ終了
⑦ 12:50鰻をさばき始める
⑧ 13:20鰻のさばき終了。1時間20分経ち、いよいよ料理が見えてきた
⑨ 13:30心臓、肝臓、胆嚢、浮き袋に分ける。
⑩ 13:35焼き始める
⑪ 14:05ドジョウの柳川の準備
⑫ 14:30柳川の完成。噛むとふわりと葉が吸い込まれるが、かすかに爆ぜるような食感があり、ほの甘い気品があるドジョウ
⑬ 14:50白焼き登場 わさびすごい量
⑭ 15:00蒲焼き登場
⑮ 15;10ご飯や肝吸い(浮き袋入り)、おしんこ(豪華)登場
⑯ 蒲焼はふわふわして繊維がなきかのように消えていく。鰻のムースである。
⑰ 15:30 3時間20分に及ぶ食事終了
⑱ この待つ間は、お母さんの爆裂トークが 続く
⑲ お客さんから電話で、
「お前んとこはいつから偉くなったっんだ」
「なんのことでしょうか?」
「予約を取るようになったんだ 」
「うちは昔からです」
あるいは電話で
「うな重出前してください」と、頼んでくる人もいるそうな。
「うちは出前をやってません」
「よそではやってるよ」
「ではそちらで頼まれたらいかがですか?」
「お客に向かって何を言う」
「あなたまだお客さんじゃないでしょう」。
当意即妙。小田原にあって江戸っ子のやりとりあり。
そりゃ当然、ここは長らく江戸前の鰻だもの。
〜静岡にあって江戸前〜
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