羊のスネ肉は冬の日差しを浴びて、輝いていた。
想いを込めて丹念に煮込まれ、今人間の口に入る。
ナイフに力を入れることなくホロリとくずれ、舌の上で肉のエキスとコラーゲンの甘みがじっとりと広がっていく。
羊の匂いを抱き込んだ赤ワインのソースがたくましく、妖艶に微笑みかける。
時間をかけて加熱し生み出された味わいには、雑味が一切なく、澄み渡って、僕らの心を晴れやかにする。
それは冬の空より高いのだ。
「オストゥ」宮根シェフの渾身の煮込み。
この日は、昼と夜で国籍も調理方法も全く違う羊料理を食べることになった。こちらが料理を選んでもいないのに、旬の食材とは関係ないのに、こういうことはよくある。
外食は、こちらから店を選び、お願いしているのにこの偶然が重なるということは、一つの定めかもしれない。