一人、下町居酒屋へ。

日記 ,

 

毎年仕事始めは、「一人下町の居酒屋で過ごす」。と決めて10数年。
赤津加や鍵屋や江戸一や丸好 シンスケやみますや、岩金酒場。
去年は、久松町の「栄作」で、女将さん元気かなあ。
一人酔いにまかせ、改めて一年の計を心に刻む。
なんてカッコイイが
本当は、人見知りで不精で暗い自分の性情を隠し、
こっそりと酔客の中にまぎれこんでいるのが気持ちいいだけなのである。

今年は三ノ輪だ!
そう思いたったおじさんは日比谷さんに乗り込む。
まずは「遠太」だな。おばちゃん元気かなあ。
相も変わらず「やってるよ」と書かれた「遠太」の看板は、電気が消され、のれんはしまいこまれたままだ。
擦りガラスから覗くと客はいない。
「やってますかあ」と、扉を開けると
「はいどうぞぉ」と明るい声。店を一人で切り盛るおばちゃんだ(もうおばあちゃんの年だけどね)。
まずはキリンの中瓶頼んで、ずらりと並んだ料理の短冊を吟味した。
「うなぎ 天ぷら」と、大きくのれんに書かれてはいるが、そんな料理はない。
ご主人が御存命だったころのなごりか。
「ポテトフライ」と頼むも
「ごめんなさいね。店が今日からだからまだ作ってないの」。
ポテトサラダ学会長としては、無念の無念。
そこで鯵の刺身で中瓶1本
次に名物「肉天」頼んで焼酎ハイボール。
頼むとおばちゃんが肉をたたく音が、天井に響く。
1~2ミリに伸ばされた豚肉は、天ぷらというよりから揚げに近い食感で
衣に歯を立てれば、カリリッと痛快な音が弾け、豚の甘みがほのかに滲み出る。
たっぷり振られた黒胡椒が食欲押して、ぺろりと一枚たべてしまう。
そこへ慌ててハイボールを流し込む。

「おめでとう」。「久しぶりだね。今年もよろしく」。
常連客が集まってきた。
さあそろそろ腰を上げるか。