エロい里芋

食べ歩き ,

こんなにエロい里芋は、初めてである。
口に入れると、里芋のほのぼのとした素朴な甘さが広がり、その後から練れた塩気が広がって、芋の甘さと溶け合う。
その瞬間、どちらかというと野暮ったい里芋の甘さが、ちらりと艶を帯び、心の底をちくりと刺すのである。
「里芋のうるかあえ」。
作ったばかりのうるかだと、熱いものとあわせたときにタンパク質が凝固してしまう。
だから一年たって、タンパク質が分解したうるかを、茹でたての小芋に合わせて火を通す。
芋の甘さに複雑な塩気というカーブがかけられて、舌をまいらせる。
「この合わせた後の鍋にこびりついた、芋とうるかをとって御飯に乗せるの。たまらないわ」。女将さんが嬉しそうに笑った。
大分県天領日田市、「春光園」の傑作である。