フランス料理は、目の前の食材を生かすためにどう切るか、どのように加熱するかを考えるのに等しく、いやあるときはそれ以上に、どのようなソースやガルニを合わせて料理を完成させるのかに、心血を注ぐ。
その結合に、共鳴と変化を生み出し、新たなロマンを探ろうとする。
「ラシーム」高田裕介シェフの料理には、そのエスプリが満ちていて、フランス料理の醍醐味を噛み締めた。
ハタのポワレは、ホースラディッシュソースやその葉の刺激と、菜の花ソースに含んだ苦みが、ハタの品や雄々しさを見事に描き出している。
一方穴子の前菜は、北海道産の身厚穴子のたくましい滋味を、カリフラワーソースの優しい甘みに出会わせて、エレガントさをまとわせる。
豚足と茄子の甘みにセップのうま味を加えたディクセルは、ラディッキオの苦み出会わせて、我々の味覚を覚醒させる。
食べていて、ロープデコルテという、胸元が大きく空いた女性服が思い浮かんできた。
あの服も、ただ胸元が空いていて、セクシーに見えればいいというものではない。
そのラインや色合いなど、女性それぞれの人格や体系にあったデザインであってこそ、初めて優美に見える。
高田シェフの料理もまた、それに似た緻密な計算が生きた料理である。
盛りつけや、調理技術、多要素など、一見現代的でありながら、古典フランス料理を踏まえた哲学が底辺に脈々と流れていて、確固とした華麗さと品格で舌に迫ってくる。
ああ、フランス料理を食べた。
フランス料理とは
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