〜正統大阪ハシゴ〜

食べ歩き ,

〜正統大阪ハシゴ〜

よく人から「お腹空いてないで味がわかりますか?」
「よくそんなに続けて食べられますね」と、聞かれる。
地方や海外に行くと、貧乏根性が出て、食べ続けねばいられなくなり、同行者にドン引きされる。
確かにお腹は空いていない。
それでも食べるのは、食欲ではない。
ただただおいしいものを食べたいという、願望でもない。
体に眠る知的好奇心が、それを貪欲に求めるのである。
食べたことのないものは、どんな味がするのか? 
他店とはどこが違うのか? 今食べなくて、いつ食べるのか?
と、矢継ぎ早にせき立てられ、仕方なく“ハシゴ”となるのである。
昨日はそんな、チェーンイーターの日であった。
それは昼からてっちりを、日本橋「太政」で食べるところから始まり(一度昼にてっちりを食べるとどんな気分かやってみたかったのです)、新世界の「だるま総本店」へと移動する。
「食べる人は80本いきますわ。関取は、2本同時にいきますわ」という、神山会長の話に驚きながら、定番の串カツ、とんかつなど9本ほど行く。
特に気にいったのは、会長が一番好きだという「ささみにんにく」、「紅生姜」、「キス」、日本三大葱の一つである岩津ねぎの串カツ。
野菜は片身ソース漬けが好きなのだが、会長がそれを見て、「ソースはどぶっと全部つけなあかん」といわれ、仰せの通りに。
鶴橋では、「新かどや」豊山なみえさんが焼く、甘鯛のジョン。
玉子の甘味と優しい甘鯛の甘みが出会って、これはたまりません。
続いて喫茶店「ロックヴィラ」で「キムチサンド」。
ハム、レタス、卵、マヨネースにキムチを挟んだトーストサンドである。
キムチは、ハム、レタス、卵、マヨネーズ、トーストとは、明らかに異次元の人であり、これは人間の度量が試されるサンドイッチであった。
続いて、新梅田食堂街の「森清」へ。
80数歳になる名物お母さんと、吉兆で修行した息子が切り盛りする、名酒亭である。
今日の「きずし」はさごしで、その穏やかなうま味が酒を呼ぶ。
そして「サラダ」は、紫玉葱と胡瓜の極薄切りながらみずみずしいアクセントが効いて、抑制された味の塩梅が素晴らしい。
ああそうそう、突き出しの「揚げ出し胡麻豆腐」もほっこりとする味だった。
お母さん今度はゆっくりと来るね。
そして最後は南船場の「YUZAN」へ。
肉タイムである。
ヒウチのタルタルに始まり、ホルモン数種、カイノミ、ランプ、イチボにヒレ。
最後はもうやけだ。ビフカツサンドにカレーに、つけ冷麺といってみよう。
1時から10時までの9時間、6軒。
まったく胃もたれしていません。今朝もすっきりお腹空く。
知的好奇心が先立つと、平気で食べられるもんですよ。