四谷「北島亭」

「北島亭」にて

食べ歩き ,

その肉は、レバーに似た妖艶と血が持つ猛々しさを含んで、歯と歯の間に肉汁を滴らせる。
さらにそこには、明らかな意識が潜んでいた。
鉄分の多さや、妖艶や猛々しさだけではない、何かが我々の心を揺さぶる。
そう、山シギは、死しても尚、孤高の尊厳が生き続けていて、人間に突きつける。
血と内蔵と赤ワインと白ワイン、フォアグラとバターによるサルミソースは、そんな山シギの意識を高め、命の気高さを高めていく。
我々はその中で、食べるとは、他の命を絶って生きるとはなにかを考えさせられる。
この感覚こそが、この鳥ならではの聡明な滋味であり、山シギを食べるという意味なのである。