鰆は、この世に生を受けた喜びに、ふるえていた。
喜ぶあまり、中心をロゼに染めている。
ゆっくりと噛めば、歯は身肉に吸い付いて、バレリーナのしなやかさで舌の上に広がっていく。
ほの甘いような、気品が染みた滋味が滲み出て、顔を緩ませる。
いたいけな甘さに、胸が熱くなる。
はらり、ふわり、はらり、ふわり。
身が、生まれたての花弁となって舌を舞う。
ソースに溶け込んだシャルトリューズの香りが、色気を醸し、僕はもうどうしようもなくなって、虚空を見つめる。
「カンテサンス」2月の一皿。
鰆は、この世に生を受けた喜びに、ふるえていた
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