「よおく、頑張って大きうなったな。おいしうなったな。えらい、えらい」。
78歳のおばあちゃんが漬けた、鯖の醤油干しは、いたわり、愛された味わいがした。
鯖を塩焼きで食べるより、丸く、舌の上でしとっと崩れていく。
醤油味が出ているのでもない、鯖の強さが出ているのでもない。
醤油と鯖が、互いを尊重しながら一つの味となった、穏やかな味の地平線がある。
「どの醤油と醤油を混ぜるか、酒の分量、みりんを入れるか入れないか、どれくらい干すか、その日の魚によって考えます」と、息子の野村さんは言う。
鯖だけでなく、ハタハタ、穴子も漬け込み、醤油ダレがちょうど馴染んだ頃あいを見計らって、店頭に並べる。
長年の経験と勘が、味となってほぐれ、充足のため息をつかせる。
魚の醤油干し。
これは定期的に取寄せよう。
若狭の海に感謝しよう。
どこにもありそうだが、福井県小浜にしかない逸品である