野菜はたまねきだけです」。
富来茶屋の小田まゆみさんはそう言って、十皿の料理と天ぷらの料理を出してくれた。
ブリの刺身以外は、すべて野草と薬草である。
甘草、タンポポの草、ホタル袋の花のポテトサラダ詰、野イチゴ、桑の実、ブリの刺身には、浜ヒルガオ、ツワブキノビルの根のラッキョウ漬け、イギスのノビル味噌かけ、スベリヒユの茹で辛子酢和え、アカダのおひたし、野芥子のゴマ和え、新玉ねぎとハルジオン。
天ぷらは、キラン草、セイタカワダチ草、イノゴヅチ、タデ、雪の下、ゴギョウ、赤ツメ草、ドクダミ、カボチャの花。
どの草も一筋縄ではいかない。
噛むほどに、味が変わり、香りが弾ける。
噛みしめるほどに、味蕾が覚醒し浄化される。