貴重本を入手

日記 ,

貴重本を入手。
京都特集の編集後記で、編集長内藤厚(里見真三)が書いている。
「取材を開始する前、さる大食通の事業家に相談に行きました。『一見でいっても、どこも本当にうまいものは出しません。何回も通って仲良くなって、はじめて料理人は真剣になる。特に京都ではそうです』。-その一言でわれわれ東夷は、複雑きわまりない古都のヒミツをさぐるために編集部をしばらく京都に移しました」。
雑誌が売れ、広告収入もあり、ふんだんにお金をつかえた時代だからこそ、雑誌が文化を作っていた時代である。
執筆者もキラ星の如く。
丸谷才一、開高健、石毛直道、松山猛、玉村豊男、丸元淑生、安岡章太郎、大橋正、山崎正和、宮脇俊三、増井和子、深沢七郎、神吉拓朗、大河内昭爾・・・・。
玉村豊男の才を見出した内藤厚の慧眼と、ラーメンや丼を真上から撮る、後のB級グルメにつながる手法、またパリ特集では、一ヶ月編集部をパリに移すなど、逸話が絶えぬ雑誌である。
当時の食事情だけでなく、錦市場45店舗徹底解説やシャルキュトリー48種の写真と解説など、辞典としての意味合いもある。
「東京人の食」で、かつてのシェジャニー、ヴァンセーヌ、ドゥロアンヌ、ビストロサンマルタン、カフェドニース、ビストロロテュース、ビストロヴォンヴォワザンンドの料理が出ている! 希少な昭和フレンチの記録である。
また「続・味で勝負」もなかなか見つからなかった(「味で勝負」は結構あるのだが)。その店紹介も、本質を突き、職人を描ききり、品格と愛情を漂わす、今の食関係のライターが(つまり僕も)、はだしで逃げたくなる、名文である。
どなたか「味で勝負③」をお持ちではないですか?