「名前をどうしようかと考えていた時、地名に気づいたんです」。
山中にぽつんと建つ古民家でチョコレート工場を営む勝田誠さんは、ゆっくりと語り始めた。
「莚場という地名が最初は読めなくて、調べてみればいわゆる藁などで編んだムシロのことで、莚場とは、人々が集まる場所という意味があったんです。これだと思いました」。
そうしてできた、「莚カカオクラブ」は、民家などない畑の真ん中に建っている。
チョコレートカフェを併設した工場である。
莚の字を江戸の箱文字にし、それをデジタルフォント化にして、板チョコに刻んだ。
現在五カ国のカカオで作っている。
コスタリカ産はすぐり系酸味 があり、ホンジュラス産は、パッションフルーツ系の微かな酸味があり、ガーナ産は苦みつよく土着的な味わいがあり、ベトナム産は酸味が爽やかでフルーティ 、トリニダード・トバゴ産は、シガーの香りがして土っぽい。
50時間機械を回して乳化させるチョコレートを、途中で舐めさしていただいた。
ああ。
心が甘く溶けていく。
「まずはシングルオリジンで作り、ヴィーガンチョコレートも作ります。でも佐渡の食材を生かしたい。豊富なフルーツを使うのも良いのですが、佐渡の日本酒ボンボンも考えています。
でもそれよりも、米麹を使ったカカオ味噌や、
カカオ堆肥で作る野菜、クラフトビール、
カカオを燃やして灰にして、釉薬を作り器を作ってみたいです」
勝田さんの夢は広がる。
その夢が叶った時、佐渡島の人々は、豊かな甘い生活に包まれるだろう。