荻窪「有いち」で、一ヶ月早いお雑煮

食べ歩き ,

荻窪「有いち」で、一ヶ月早いお雑煮をいただいた。
塩焼きブリと小芋、姫蕪に柚子、焼き餅のお雑煮だ。
汁を一口すすって目を見開いた。
塩焼きブリのお雑煮は、ブリから出る脂や酸味、旨味が汁に溶け込んでさらにうまくなる。
しかし「有いち」の店主は、それを見込んでカツオだしを控え、淡くしてあったのだ。
一口目から圧倒するのではない。飲み、食べ進むうちに、ブリの滋味が汁に溶けだし、最後の一滴に頂点に達する計算がなされているのである。
我々は、泥沼に引き込まれるように。ずぶずぶと魅力にはまっていく。
食べ終わったとき、心の底から「おいしい」という言葉が出るのはそのせいだ。
そして餅。炭の熾火で、破れぬよう丹念に焼かれた餅は、表面はカリッとしていながら
中はもっちりとして甘い。
餅本来の甘さが、微塵も逃げていない、清々しい甘みが広がる。
それがこの汁と共にお雑煮を高めあうのだから、たまらない。