山奥の精が破裂した。
吉田牧場のラクレットがかけられた、あかやまとりだけを噛むと、くにゃりと歯の間でもだえ、おびただしい茸の香りが鼻に抜けた。
香りがくんずほぐれつ、鼻孔にからみつく。
香りは強いが澄んでいて、人間の力が及ばない神秘で圧倒する。
一方、舞茸の天ぷらは、噛むほどに「生きている」、「生きている」と叫びだす。
噛むほどに味がたたみかけ、頭が無になっていく。
ボクはなに言わず、なにも発せず、ただひたすら無心にむしゃむしゃとやった。
それが、百年以上経った巨木にしか住み着かない、茸への礼儀だろう。
そして食べるごとに、人間のおごりや業が、恥ずかしくなってくる。
秋の徳山鮓にて。
茸への礼儀
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