「昔の味はこうだったと思うんです。いつから濃くなったんでしょうね。米軍が駐屯するようになって変わったんでしょうか?」そう言って、花崎さんは静かに笑った。
舌が裸になった。
心が緩やかに包まれた。
「いなむるち」は、白みその温かい甘みの中で、豚脂のコクと蒲鉾のうま味がそっと息づいて馴染み、静かな静かなうま味を舌に寄せて、僕らを黙らせる。
その沈黙は、感動に充ち、感謝を伴う。
味付けが、微塵も余計でない。
それぞれの食材の、味わいの輪郭が明確に伝わるので、感動に充ち、感謝を伴う。
優しい、穏やかという形容詞では表現しきれない、恵みへの敬意に満ちた、味付けなのである。
昆布と豚バラと蒲鉾の、仲睦まじい味わいに微笑む、クーブイリチー。
豚肉や豚脂、コラーゲンのうま味が、舌の上でほどけていく、ラフテー。
ピーナッツの香りと甘みが、口腔を埋めつくす、ぽってりとろんとし上げられた、官能的なジーマミー豆腐。
白和えとは、豆腐のほのかな甘みを慈しむ料理だったのかと気づかせられる、苦菜の白和え。
食べるほどに時間がゆるみ、心が温まり、夜が安寧へと向かう。
「心花」は、ウチナーンチュが料理に込めた、豊かな愛と品を今夜も伝える。
編集