肉を噛んだ途端、鶏が躍動した。
彼は、名店修行後、師匠が以前に営んでいた場所に空きがあり、そこで独立開業した。
開店時でもうすでに、東京の焼鳥屋としては高い水準にあった。
しかし師匠の味を知る者にとっては、物足りない。
あと一歩、後半歩突っ込んで焼けば頂点に近づくのに。
そのじれったさが心残りの味となる。
何度かそう話したこともある。
彼も承知していたのだろう。しかし瞬く間に火が入って、急上昇する半歩の距離は、勇気と確信が伴わなければ、とても遠い。
先日久しぶりに食べた。
そのソリは、噛んだ瞬間、「どうだっ」と叫んで、膨張しつつあった肉汁を噴き出し,レバーは表皮が0.5mm以下で焼き固められ、中のふわりと対比のうま味を見せ、皮は、皮側と肉側の理想がくっきりと表れていた。
阿佐ヶ谷「バードランド」。
彼はいま、旬の真っ盛りである。
肉を噛んだ途端
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