「百姓とは、なんでもできるすごい人で、僕の憧れなんです」。
越前海岸で塩を作る志野さんはそう言われた。
塩をつくる傍ら、畑で野菜を作り、梅や柿を育て、鶏や山羊を育て、夏は海に潜って、鮑やサザエを獲っている
塩を炊いているのは、年季の入った古民家である。
「明治元年に建てられたこの家を買ったら、裏山が一つついてきたので、畑も始めました」という。
「ここは山に染み込んだ雨水が、100年近く経って海の中に湧き出ているのです。だからおいしい。沖合より0.7%塩分濃度が薄いので効率が悪いのですが、このおいしい海水で塩をつくりたかつた」。
毎日毎日、薪火を炊いて作る「 百笑の塩」は、うまみが深く、一度舐めると、手が止まらなくなる。
志野さんが作った野菜を茹で、この塩をかけてたべたい。
贅沢とはそういうものではないだろうか。
福井 越前海岸 志野製塩所にて。